マッカで啓示された

 

 本章啓示の理由とアブ ラハブのアッラーの使徒に対する傲慢

 

[بِسْمِ اللَّهِ الرَّحْمَـنِ الرَّحِيمِ ]

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

[تَبَّتْ يَدَآ أَبِى لَهَبٍ وَتَبَّ - مَآ أَغْنَى عَنْهُ مَالُهُ وَمَا كَسَبَ - سَيَصْلَى نَاراً ذَاتَ لَهَبٍ - وَامْرَأَتُهُ حَمَّالَةَ الْحَطَبِ - فِى جِيدِهَا حَبْلٌ مِّن مَّسَدٍ ]

 (1. アブー・ラハブの両手は滅び,かれも滅びてしまえ。) (2. かれの富も儲けた金も,かれのために役立ちはしない。) (3. やがてかれは,燃え盛る炎の業火の中で焼かれよう。) (4. かれの妻はその薪を運ぶ,) (5. 首に棕櫚の荒縄かけて。)

 

 アル・ブハーリーはイブン アッバースに伝えられたこととして、預言者 {saw} がアル・バトハーの谷へ出かけ山に登ったときのことを記録している。その時彼は叫んだ、

«يَا صَبَاحَاه»

 (みなさん、すぐ来てください)  それでクライシュ族は彼の周りに集まった。すると彼は言った、

«أَرَأَيْتُمْ إِنْ حَدَّثْتُكُمْ أَنَّ الْعَدُوَّ مُصَبِّحُكُمْ، أَوْ مُمَسِّيكُمْ أَكُنْتُمْ تُصَدِّقُونِّي»

 (もし私がみなさんに、敵が朝または夕方にあなたを攻撃しに来ると言ったら、私の言う事を信じるだろうか。)  彼らは、「信じる」 と答えた。 それで彼は言った、

«فَإِنِّي نَذِيرٌ لَكُمْ بَيْنَ يَدَيْ عَذَابٍ شَدِيد»

 (まことに、私は、厳しい責苦が訪れる前のあなた方皆への(遣わされた)警告者である。)  その時アブ ラハブ は言った、「あなたはそのことのために私たちを集めたのか。あなたは滅びてしまえ。」 それでアッラーはの最後に啓示された、

[تَبَّتْ يَدَآ أَبِى لَهَبٍ وَتَبَّ ]

 (アブー・ラハブの両手は滅び,かれも滅びてしまえ。)  と。

 

 別の文言では、彼は両手の塵を払いながら立ち上がって言った、「今日の残りあなたは滅びてしまえ。あなたはそのことのために私たちを集めたのだから。」 それで、アッラーは啓示された、

[تَبَّتْ يَدَآ أَبِى لَهَبٍ وَتَبَّ ]

 (アブー・ラハブの両手は滅び,かれも滅びてしまえ。)  と。 

 始めの部分は彼に対する嘆願、後半は彼に関する情報である。この男アブ ラハブ はアッラーの使徒 {saw} のおじの一人であった。彼の名は アブドル-ウッザ ビン アブドル-ムッタリブ、氏名はアブ ウタイバ であったが、彼の顔のまぶしさのためにアブ ラハブと呼ばれていた。彼はしばしばアッラーの使徒 {saw} に危害を加えた。彼は、使徒と使徒の宗教を憎み、嘲っていた。イマーム アフマド は アブ アッ・ズィナドの伝えることとして、バニ アッ・ディール出身のラビーア ビン アッバードと呼ばれる男性 (彼はイスラーム以前の無知時代の人であったがイスラームを受け入れた) が彼に次のように言ったと記録している。     「私はイスラーム以前の無知時代にズル・マジャーズの市場で預言者を見たが、彼はこう言っていた、

«يَا أَيُّهَا النَّاسُ، قُولُوا: لَا إِلهَ إِلَّا اللهُ تُفْلِحُوا»

 (人々よ、アッラー以外に崇拝に値するいかなる神もないと言いなさい。そうすれば成功するだろう。)  人々は彼の周りに集まっていた。彼の後ろには、まぶしい顔をした、二つの編んだ髪のある斜視(目の交差した)の男性がいた。その男は、『まことに、彼は (私たちの宗教からの) 背教者で嘘つきである。』 この男は、彼(預言者)が行くところへどこへも付いて行った。それで私はそれは誰であるのかたずねると、彼ら(人々)は 『彼のおじ、アブ ラハブだ」 と言った。』 」

 アフマドはまた、スライジュによる同じ話も記録している。スライジュ はそれをイブン アブ アッ・ズィナドから聞いたが、イブン アブ アッ・ズィナドはそれを父親(アブ ズィナド)から聞いた。しかしながら、そちらの方では、アブ ズィナドがこう言った、「私はラビーアに、『その時、あなたは子どもだったのか』 と聞いた。彼は、『そうではなかった。アッラーに誓って、その頃私は(自分の人生の中で)最も知的であった。そして、(音楽の)フルートで最も強い吹き手であった。』 と答えた。」 アフマドだけがこのハディースを記録している。

 

 次のアッラーの御言葉

[مَآ أَغْنَى عَنْهُ مَالُهُ وَمَا كَسَبَ ]

 (かれの富も彼の子ども (カサブ) (日本ムスリム協会訳:儲けた金) も,かれのために役立ちはしない。)  について、イブン アッバースと他の人々は、

[وَمَا كَسَبَ]

 (彼の子ども (カサブ) (日本ムスリム協会訳:儲けた金) も,かれのために役立ちはしない。)  「カサブは、彼の子どものことである」 と言っている。 同様の文言がアーイシャ、ムジャーヒド、アター、アル・ハサン、イブン スィーリーンにより報告されている。

 イブン マスウードは、アッラーの使徒が信仰に呼びかけたとき、アブ ラハブはこう言ったと述べている、「私の甥が言う事がたとえ真実であっても、私は私の富と私の子どもたちで審判の日の辛い責苦から自分を解放する(救う)だろう。」 それで、アッラーは啓示された、

[مَآ أَغْنَى عَنْهُ مَالُهُ وَمَا كَسَبَ ]

 (アブー・ラハブの両手は滅び,かれも滅びてしまえ。)  と。 

 それから、アッラーは仰せられる、

[سَيَصْلَى نَاراً ذَاتَ لَهَبٍ ]

 (やがてかれは,燃え盛る炎の業火の中で焼かれよう。)   それには、炎、悪と猛烈な火災がある、ということである。

 

  アブ ラハブの妻ウンム ジャーミルの宿命

 

[وَامْرَأَتُهُ حَمَّالَةَ الْحَطَبِ ]

 (かれの妻はその薪を運ぶ,) 彼の妻はクライシュ族で先頭に立つ女性の中にいた。彼女はウンム ジャーミルとして知られていた。彼女の名はアルワ ビント ハルブ ビン ウマイヤで、アブ スフヤンの姉妹であった。彼女は、不信心であること、(預言者の齎した宗教について)拒否することとその頑なさにおいて、夫を支えていた。したがって、彼女は審判の日、彼に業火の罰が執行されるのを手伝っているだろう。

 アッラーは仰せられている、

[وَامْرَأَتُهُ حَمَّالَةَ الْحَطَبِ - فِى جِيدِهَا حَبْلٌ مِّن مَّسَدٍ ]

 (かれの妻はその薪を運ぶ, - 首にマサド (棕櫚) の荒縄かけて。)  彼女は薪を運び、夫の上にそれを投げかける、彼が(責苦で)受けているものを増やすために。そして、彼女はそうする準備ができている、ということである。

 

[فِى جِيدِهَا حَبْلٌ مِّن مَّسَدٍ ]

 (首にマサド (棕櫚) の荒縄かけて。)  ムジャーヒド と ウルワ は、「業火のヤシの繊維で出来ている」 と言った。

 アル・アウフィ がイブン アッバース、アティヤ アル・ジャダリ、アッダッハーク、イブン ザイド から聞いたところによると、彼女はアッラーの使徒の通り道によく棘を置いていた。アル・ジャウハリ は、「アル・マサド は繊維のことで、また繊維やヤシの葉から作られた縄のことである。また、らくだの皮や毛から作られたものでもある。きつく巻いて結ぶとき、(アラビア語で) 『マサドゥト ル・ハブラ』 『アムスドゥフ マサダン』 と言う」 と述べた。 

وقال الجوهري: المَسَدُ: الليف. والمَسَد أيضا: حبل من ليف أو خوص، وقد يكون من جلود الإبل أو أوبارها، ومسدت الحبل أمسدُهُ مَسْدًا: إذا أجْدتُ فَتله

 ムジャーヒドは言った、

[فِى جِيدِهَا حَبْلٌ مِّن مَّسَدٍ ]

 (首にマサド (棕櫚) の荒縄かけて。)   「これは鉄の襟を意味している」  アラブ人が滑車ケーブルをマサドと呼ぶのをご存知だろうか。