マッカで啓示された

[بِسْمِ اللَّهِ الرَّحْمَـنِ الرَّحِيمِ ]

 慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

 

[وَالضُّحَى - وَالَّيْلِ إِذَا سَجَى - مَا وَدَّعَكَ رَبُّكَ وَمَا قَلَى - وَلَلاٌّخِرَةُ خَيْرٌ لَّكَ مِنَ الاٍّولَى - وَلَسَوْفَ يُعْطِيكَ رَبُّكَ فَتَرْضَى - أَلَمْ يَجِدْكَ يَتِيماً فَآوَى - وَوَجَدَكَ ضَآلاًّ فَهَدَى - وَوَجَدَكَ عَآئِلاً فَأَغْنَى - فَأَمَّا الْيَتِيمَ فَلاَ تَقْهَرْ - وَأَمَّا السَّآئِلَ فَلاَ تَنْهَرْ - وَأَمَّا بِنِعْمَةِ رَبِّكَ فَحَدِّثْ ]

 (1. 朝(の輝き)において,) (2. 静寂な夜において(誓う)。) (3. 主は,あなたを見捨てられず,憎まれた訳でもない。) (4. 本当に来世(将来)は,あなたにとって現世(現在)より,もっと良いのである。) (5. やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。) (6. かれは孤児のあなたを見付けられ,庇護なされたではないか。) (7. かれはさ迷っていたあなたを見付けて,導きを与え。) (8. また貧しいあなたを見付けて,裕福になされたではないか。) (9. だから孤児を虐げてはならない。) (10. 請う者を揆ね付けてはならない。) (11. あなたの主の恩恵を宣べ伝えるがいい。)

 

 スーラト アッ・ドハー啓示の理由

 イマーム アフマド は ジュンドゥブ から記録している。彼は言った、「預言者は病気になられたので一夜か二夜、礼拝に立たなかった。それで一人の女性が来て言った、『ムハンマドよ、あなたの悪魔はついにあなたから出て行ったと思う。』 それでアッラーは啓示された-

 

[وَالضُّحَى - وَالَّيْلِ إِذَا سَجَى - مَا وَدَّعَكَ رَبُّكَ وَمَا قَلَى ]

 ( 朝において, -  暗くなる夜において(誓う)。 -  主は,あなたを見捨てられず,憎まれた訳でもない。)  」 アル・ブハーリー、ムスリム、アッ・ティルミズィ、アン・ナサーイ、イブン アビ ハーティム、イブン ジャービル らがこのハディースを記録している。

 このジュンドゥブ (語り手) は、イブン アブドッラ アル・バジャリ アル・アラキーである。アル・アスワド ビン カイスからの語りでは、彼は、ジュンドゥブがジブリールがアッラーの使徒 {saw} のところに来るのにゆっくりしていたと言うのを聞いたと述べている。それで偶像崇拝者たちが、「ムハンマドの主は彼を見捨てた」 と言ったので、アッラーは啓示された-

 

[وَالضُّحَى - وَالَّيْلِ إِذَا سَجَى - مَا وَدَّعَكَ رَبُّكَ وَمَا قَلَى ]

 ( 朝(の輝き)において, -  暗くなる夜において(誓う)。 -  主は,あなたを見捨てられず,憎まれた訳でもない。) 

 

[وَالضُّحَى - وَالَّيْلِ إِذَا سَجَى ]

 ( 朝(の輝き)において, -  暗くなる夜において(誓う)。)  アル・アウフィは、イブン アッバースからが言ったことを記録している、「クルアーンがアッラーの使徒 {saw} に啓示された時、(ある折に) ジブリールは彼のところに来るのが何日も遅れていた。それゆえアッラーの使徒 {saw} はこのために動揺し、偶像崇拝者たちは、『彼の主は彼を放棄し、彼を憎んでいる』 と言い始めた。それでアッラーは啓示された-

 

[مَا وَدَّعَكَ رَبُّكَ وَمَا قَلَى ]

 ( 主は,あなたを見捨てられず,憎まれた訳でもない。)  この中で、アッラーは、かれが据えられた朝と光によって誓われている。

 

[وَالَّيْلِ إِذَا سَجَى ]

 ( 暗くなる (サジャ) 夜において(誓う)。)   は、定まり、暗くなり、人々に覆いかぶさる、ということである。これは、ムジャーヒド、カターダ、アッ・ダッハーク、イブン ザイド、その他の人々によって述べられていることである。そして、これ (光) とそれ (闇) を創造されたお方の御力をはっきりと示す証拠である。

 

 これはアッラーが次のように仰せられているのと同様のことである。

[وَالَّيْلِ إِذَا يَغْشَى - وَالنَّهَارِ إِذَا تَجَلَّى ]

 ( 覆われる夜において, - 現れる昼において,) (92:1-2)

 

 アッラーはまた仰せられている、

[فَالِقُ الإِصْبَاحِ وَجَعَلَ الَّيْلَ سَكَناً وَالشَّمْسَ وَالْقَمَرَ حُسْبَاناً ذَلِكَ تَقْدِيرُ الْعَزِيزِ الْعَلِيمِ ]

 ( かれは,夜明を打ち開く方であり,また休息のために夜を定め,太陽と月を計算のために置かれる。それが,偉力ならびなく全知であられる方の摂理である。) (6:96)

 

 それからアッラーは仰せられている、

[مَا وَدَّعَكَ رَبُّكَ]

 ( 主は,あなたを見捨てられず,)   『かれはあなたを放棄したのではない』 という意味である。

[وَمَا قَلَى]

 ( 憎まれた訳でもない。)   『かれはあなたを嫌っているのではない』 

 

 来世はこの最初の世よりもよい

 

[وَلَلاٌّخِرَةُ خَيْرٌ لَّكَ مِنَ الاٍّولَى ]

 (本当に来世は,あなたにとって現在より,もっと良いのである。)  来世の住まいはこの現在の住まいよりもあなたにとってよりよいという意味である。このためにアッラーの使徒 {saw} は世俗のものに関して人々の中でもっとも節制し、世俗の事物には人々の中で一番無頓着であった。このことは、彼の伝記から必然的によく知られている。預言者 {saw} が人生の終わりに、この世に永遠にとどまってから楽園に行くか、アッラーの友のところに行くか、選択肢を与えられたとき、彼はこの程度の低い世界よりもアッラーのもとにいることを選んだ。

 イマーム アフマドは、アブドッラ ビン マスウードが言ったことを記録している- 「アッラーの使徒はわらのマットの上に横になっていたので、体の横側に痕が残った。それで、起きたとき、彼は体の横をこすり始めた。それで、私は言った、『アッラーの使徒よ、このわらのマットの上に何か柔らかいものを広げるのを私たちに許してくださいませんか。』 彼は答えた、

 

«مَالِي وَلِلدُّنْيَا، إِنَّمَا مَثَلِي وَمَثَلُ الدُّنْيَا كَرَاكِبٍ ظَلَّ تَحْتَ شَجَرَةٍ ثُمَّ رَاحَ وَتَرَكَهَا»

 ( 私は、この世とは何もない。私とこの世をたとえると、乗り物に乗っている者が木陰で休むようなもので、彼はそこを離れて先へ進む)  アッ・ティルミズィ と イブン マジャ がこのハディースをアル・マスウーディから記録している。アッ・ティルミズィは、「ハサン サヒーフ」 と言っている。

 

 来世のおびただしい報奨がアッラーの使徒を待っている

 それからアッラーは仰せられている、

[وَلَسَوْفَ يُعْطِيكَ رَبُّكَ فَتَرْضَى ]

 ( やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。)  終の住みかでアッラーは彼にお授けになり、彼に従った人々について、彼が満足するようにするということである。 かれが寛大に彼のために用意されたものがある。それには、アル・カウサルの川があり、その土手にはへこんだ真珠でできたドーム、土手の泥はムスクのもっとも強い香りがする。 

 イマーム アブ アムル アル・アウザイ はイブン アッバースがこのように言ったと記録している- 、「アッラーの使徒 {saw} は自分の後にウンマが恵まれるものを見せられたが、それは宝に次ぐ宝であった。それで彼はそのことに喜んだ。その時、アッラーは啓示された-

[وَلَسَوْفَ يُعْطِيكَ رَبُّكَ فَتَرْضَى ]

 ( やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。)  そして、アッラーは楽園で彼に100万の宮殿を与えられ、宮殿の一つ一つには妻でも使用人でも彼が望むものが何でもある。」 これはイブン ジャリール、イブン アビ ハーティムによって記録されている。この継承経路はイブン アッバースまで信頼できるもので、このような文言は、タウキフであるものからのみ述べられる。

 

 アッラーの使徒への恩恵のいくつかに言及、使徒ムハンマドに与えられた恩恵を列挙される

 アッラーは仰せられている、

[أَلَمْ يَجِدْكَ يَتِيماً فَآوَى ]

 ( かれは孤児のあなたを見付けられ,庇護なされたではないか。)  これは、父は、まだ母が彼を身篭っている間に亡くなり、母アーミナ ビント ワフブは彼がまだ6才だったときに亡くなった、という事実について述べられている。その後、彼は祖父アブドル-ムッタリブの保護下にあった。その祖父がムハンマド {saw} 8才の時に亡くなるまでは。その後は彼のおじ、アブ ターリブが彼に対して責任を負い、守り、援助し、地位を上げ、栄誉を与え、ムハンマドが40才の時アッラーが預言者としての使命を与えられてからは、人々が彼に害を加えないようにさえした。それでもなお、アブ ターリブは偶像崇拝の民族の宗教に従い続けた。これら全てはアッラーの定められたことによって起こった。そして、かれの定めは最も素晴らしい。やがて、ヒジュラの少し前にアブ ターリブは亡くなった。その (アブ ターリブの亡き) 後、クライシュ族の愚かな無知の人々はムハンマド {saw} を攻撃し始めたので、アッラーは彼のためにその人々を離れてアル・アウス や アル・ハズラジの町への移住をお選びになられた。その町の人の中から、ムハンマド {saw} を (アル・マディーナで) 助けた人々がいた。 アッラーは、彼のスンナが最も完全で完成された形で広がるようにされた。そして、ムハンマド {saw} が彼らの都市に到着したとき、人々は彼に保護を与えて、彼を支え、彼を弁護して、(イスラームの敵に対して)彼の前に出て戦った -彼らみなにアッラーのご満悦あれ。これら全てはムハンマド {saw} のためのアッラーからの保護で、彼が守られ気にかけられていたことの表れであった。

 

 それから、アッラーは仰せられている、

[وَوَجَدَكَ ضَآلاًّ فَهَدَى ]

 ( かれはさ迷っていたあなたを見付けて,導きを与え。)   これはアッラーが次のように仰せられているのと同様のことである、

 

[وَكَذَلِكَ أَوْحَيْنَآ إِلَيْكَ رُوحاً مِّنْ أَمْرِنَا مَا كُنتَ تَدْرِى مَا الْكِتَـبُ وَلاَ الإِيمَـنُ وَلَـكِن جَعَلْنَـهُ نُوراً نَّهْدِى بِهِ مَن نَّشَآءُ مِنْ عِبَادِنَا]

 ( このようにわれは,わが命令によって,啓示(クルアーン)をあなたに下した。あなたは,啓典が何であるのか,また信仰がどんなものかを知らなかった。しかしわれは,これ(クルアーン)をわがしもべの中からわれの望む者を導く一条の光とした。)  (42:52)

 アッラーは仰せられる、

[وَوَجَدَكَ عَآئِلاً فَأَغْنَى ]

 ( また貧しいあなたを見付けて,裕福になされたではないか。)  『あなたは扶養家族がいて貧しかった。そこで、アッラーは、あなたを裕福にし、かれ以外の他のすべてから独立させられた。』 という意味である。 このように、アッラーは彼のために2つの境遇を結合された。つまり、貧しく忍耐強い人と裕福で感謝する人である。

 二つのサヒーフに、アブ フライラから、アッラーの使徒 {saw} が次のように言ったことが記録されている。

  

«لَيْسَ الْغِنَى عَنْ كَثْرَةِ الْعَرَضِ، وَلَكِنَّ الْغِنَى غِنَى النَّفْس»

 ( 富は財産の豊富なことで測られるのではない。そうではなく、富は魂の豊かさである。) 

 サヒーフ ムスリムでは、アブドッラ ビン アムルからのもので、アッラーの使徒 {saw} はこう言った、 

«قَدْ أَفْلَحَ مَنْ أَسْلَمَ وَرُزِقَ كَفَافًا وَقَنَّعَهُ اللهُ بِمَا آتَاه»

 (イスラームを受け入れる者は誰でも基本的なニーズを供給され、アッラーは彼をかれが与えられたものに満足するようになさる。そして、彼は成功するだろう。)

 

 この恩恵にどのように答えるべきか

 それからアッラーは仰せられる

[فَأَمَّا الْيَتِيمَ فَلاَ تَقْهَرْ ]

 ( だから孤児を虐げてはならない。)   『あなたが孤児であった時アッラーがあなたを保護されたように、孤児を虐げてはいけない』 ということである。 言い換えれば、『彼に屈辱を与えてはいけない。拒絶してはいけない。軽蔑してはいけない。むしろ、彼に親切に優しくするべきである。』  カターダは、「孤児に慈悲深い父らしくしなさい」 と言った。

 

[وَأَمَّا السَّآئِلَ فَلاَ تَنْهَرْ ]

 ( 請う者を揆ね付けてはならない。)   『あなたが迷っていた時、アッラーがあなたを導かれたように、導かれたいと思って知識を求める人を軽蔑 (拒絶) してはいけない。』 ということである。

 イブン イスハークは言った-

[وَأَمَّا السَّآئِلَ فَلاَ تَنْهَرْ ]

 ( 請う者を揆ね付けてはならない。)  「アッラーのしもべたちの中の弱い者に圧迫、横柄、卑劣であったり、意地悪くしたりしないようにということである。」

 カターダは、「これは貧しい者に慈悲と寛大さを持って応えるということである」 と言った。

 

[وَأَمَّا بِنِعْمَةِ رَبِّكَ فَحَدِّثْ ]

 ( あなたの主の恩恵を宣べ伝えるがいい。)   『あなたが貧しく困窮していた時、アッラーがあなたを裕福にされたように、あなたに与えられたアッラーの恩恵について伝えなさい』 ということである。

 

 アブ ダーウードは、アブ フライラから、預言者 {saw} がこう言ったことを記録している、 

«لَا يَشْكُرُ اللهَ مَنْ لَا يَشْكُرُ النَّاس»

 (人々に感謝しない者は、アッラーに感謝しない者である。)  アッ・ティルミズィ もこのハディースを記録し、「サヒーフ」 としている。 

 アブ ダーウード はジャービルから、預言者 {saw} がこう言ったことを記録している、

 

«مَنْ أُبْلِيَ بَلَاءً فَذَكَرَهُ فَقَدْ شَكَرَهُ، وَمَنْ كَتَمَهُ فَقَدْ كَفَرَه»

 (誰でも試練 (すなわち、災難) を克服し、それを(他人に)言及する者は、本当に感謝している。そして、誰でもそれを隠す者は、本当に感謝しない者である。)  アブ ダーウード だけがこのハディースを収録している。

 これでスーラト アッ・ドハーのタフスィールを終える。すべての称賛と感謝はアッラーにあれ。